人間の文化活動に関する記念物を文化記念物というのに対して、動物、植物、地質・鉱物および天然保護区域の自然物に関する記念物を天然記念物といい、文化財保護法や各地方自治体の文化財保護条例に基づいて指定される。
単に天然記念物というときは、国が指定する天然記念物で、文化財保護法に基づいて文部科学大臣が指定し、文化庁が所管する。
地方自治体が指定する天然記念物は、天然記念物の名称の後にその地方自治体の名前を記す。
例えば、鹿児島県出水市のツルは、「鹿児島県のツルおよびその渡来地 : 鹿児島県」と記す。
地方自治体の場合、文化財記念物も含め、管轄は教育委員会がおこなうことが多い。
実際の審査は学識経験者などで組織される審議会が設置され、審議会で審議・決定する。
天然記念物に指定されたハクビシン
ハクビシンは、昔は希少で山奥にしか生息していないような動物であった。
見た目は可愛い動物であることもあって、山梨県では1957年に県が天然記念物に指定した。
長野県に進出してきて人の目に留まったのは1960年になってからで、長野県の南部であったというが、長野県では1975年に県が天然記念物に指定して、保護を始めた。
当時から農家では将来繁殖して作物に害を与えることを懸念していたが、まだ珍しい動物だったために愛好された。
天然記念物の指定を解除されたハクビシン
天然記念物に指定された後、繁殖が進んだため、山に食べ物がなくなってきたせいで、人の住む地域にも下りてきて人間の生活を脅かすようになった。
農家では、果樹や農作物を食べ散らかされる被害に遭った。
さらに騒音も問題となった。
夜行性で、屋根裏や壁の裏、床の下などを駆けまわる音がうるさく、安心して眠ることが出来なくなった。
またハクビシンが排泄する糞尿も迷惑で、屋根裏でされると堆積して重みで天井が落ちてくる場合があったり、糞尿の病原菌や害虫が健康に悪影響を及ぼす危険性も生じてきたりした。
このような深刻な害を勘案して、山梨県も、長野県も1995年に天然記念物の指定を解除した。
まとめ
長野県では20年にわたって天然記念物に指定されて保護されていたためと、繁殖力が強いことをあって、ハクビシンは希少動物から全国的に生息する動物に変わっている。
今では、大阪府、鳥取県、大分県、沖縄県を除く43都道府県で確認されている。